真言宗十八本山 https://www.koyasan.or.jp/shingonshu/

 真言宗系の宗派は現在約50もあるそうです。 そのうち善通寺、東寺、高野山金剛峯寺など主要な16派の18総大本山が集まって、昭和33年(1958)6月に真言宗各派総大本山会(各山会)が結成されました。

 もともと各山の連絡・調整用に結成された各山会ですが、現在では専用の納経帳や巡拝案内記が用意され、霊場会としての性格も併せ持っています。

 十八本山を訪れた際は、納経・集印に奔走するだけでなく、歴史の教科書で習った文化財を直接自分の目で見て確かめ、歴史と伝統も感じてください。

 少し長いですが、『十八本山巡拝案内記』から「十八本山巡拝のお勧め」を以下に転載します。

十八本山巡拝のお勧め ◆ 真言宗各派総大本山会

 宗教において聖地を巡拝することは、洋の東西を問わず、古くから行われてきました。
 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地エルサレム、イスラム教の聖地メッカのカーバ神殿は巡礼地として世界的によく知られています。
 仏教の場合は釈迦の生誕の聖地ルンビニー、成道の聖地ブダガヤー、初転法輪(最初の説法)の聖地サールナート(ヴァーラーナシーの野鹿苑)、入滅の聖地クシナガラの四大仏跡の巡拝は、紀元前からすでに行われていました。 記録に残るものでは紀元前3世紀半ばに全インドの統一国家を創成したマウリヤ王朝第3代のアショーカ王が四大仏跡を巡拝して夫々の聖地に記念の法勅石柱を立てたのです。 これらは現在も残っています。
 インドの四大仏跡巡拝は今日、ますます盛んになってきています。

 わが国では平安中期の花山天皇(968〜1008)が西国三十三番札所として観世音菩薩の霊場を巡幸されたと伝えられています。 また室町時代には四国八十八ヶ所の霊場寺院の遍路が一般化してきました。 これらの聖地はもと若き日の弘法大師ご修行の場でありました。
 ご承知のように、三十三番札所、八十八番札所その他の霊場は、今日、全国各地域にミニ霊場が設けられています。
 今、巡礼は静かな波が起こっています。
 信仰のためというのはいうまでもなく、何かを求めて、あるいは心の癒し、健康保持、観光、旅の楽しみに漬るなど、巡拝の功徳は量り知れないものがあります。

 真言宗の総大本山である十八本山は、宗祖弘法大師ご生誕の善通寺、大師が真言宗の根本道場として嵯峨天皇から下賜された教王護国寺(東寺)また大師がご入定された高野山(金剛峯寺)をはじめ、大師信仰を中軸としている点に他の聖地、霊場寺院とは異なった特色があります。
 その他の総大本山もすべて由緒深く、歴史的にも文化的にも、わが国の極めて重要な位置と意義をもっていることは申し上げるまでもありません。
 巡拝は広い意味での宗教的実践であって、言い換えれば「歩く修行」であることでもあります。 信仰を深めるというのは体で感知することにほかなりません。 副次的には祈りのご利益、ご功徳、そして願いの成就をいただけるのです。
 また、十八本山を巡拝することはわが国の歴史や文化をじかに学ぶことでもあります。 一般的な観光だけでは歴史の深さや伝統文化のすばらしさを伺い知ることはできません。

 巡拝の旅は、単なる行楽とは違った心のゆたかな糧が得られます。 聖地に特有な雰囲気は、ある意味で日常生活とは異次元の世界に身を置くことであります。 今日の社会はあまりにも多忙であり、私達は心身ともに疲労しがちです。
 仏教は、見聞覚知を説きます。 見たり聞いたり考えたり知ることであります。 巡拝こそ、この教えを学ぶためだといってよいでしょう。

 論より証拠。 さあ、十八本山巡拝の旅に出掛けましょう。

出所:『十八本山巡拝案内記』

更新日:2020/01/18