吉祥院天満宮詳細録 第七章 p226 - 230
|第七章 (8/8)|
(一四 吉祥院天満宮創祀には大なる関係は有せざるも、永観二年六月廿九日菅霊の御託宣中特に吉祥院は代々菅家の子孫絶ゆることなく誠を以て法要、祭祀を修すれば菅霊も御感応ありて「吉祥院のこと云々先祖代々恩所皆以随喜三宝歓悦」と御託宣ありされば当社は朱雀天皇承平四年より奉祀せる証明の一たり。
『 ○永観(円融院二年六月廿九日御託宣
永観二年甲申六月廿九日戍申辰時以禰宜藤原長子託宣記我此砌下月来之間両三僧侶種々修善逓以出入黄昏錫杖之音日夜懺法之響令仏読経天動地感何況我及眷属尤有其益件僧等上レ陳之而三摩耶形是皆釈衆若用此用此人[1]法威仍以愚昧女軽々令言何可賢用本心之故也 寺家別当取等注之我欲一事云々 我家子孫遠近有員内外不離漸経数代逓難相知歟昔日依讒言我之日大臣時平卿納言定国菅根朝臣偽称勅宣陰陽寮官人給種々珍宝咀我並子孫永絶不相続之由神祭多送日月皇城八方占山野厭術埋置雑宝然而我不絶之術随分相構被姓名之人皆以短命又子々孫々不官位家貧才乏是依厭術也 朝家之政豈可然乎 高視[2]朝臣等切々祈念云子々孫々家業不断云々 我為家文殿書等被空廃淳茂登省及第次々在躬輔正相続事一向我加護力毎度成妨乎 大弐朝臣兼式部大輔事又希有為家有面目公無憲法大弐朝臣内外共末孫又存信心造塔写経之大願我深廻謀今令赴任暫停他事早遂此願合力之人々現世後世之大願皆成生々世々之因果全熟我一時之間廻於三界常住所者済度衆生界也 普賢文珠観音地蔵同体菩薩逓来化度我毎日往詣帝釈宮閻羅王宮自在天宮五天竺国大唐長安城並西明寺青竜寺新羅国祥武城当州皇城並当府及諸国所々帰依占別宮等也 我随身伴党十六万八千八百余人総含恨背世貴賤霊界皆悉集来但無理含恨之輩専不相共昔自少年時入唐之心出身之後被大使本愛早欲渡海而副使長谷椎[3]朝臣聊有相語遅怠之間昇大臣巳以不遂依彼本執常在唐家抑我是蒙摂政之詔成功之身朝家定憲何無其賞只贈一階大山之上如一塵我巳無実事之後帝釈宮召鎮国明神糾之随即種々災変面々出来公家不其譴改元為延長之日本右大臣官彼左遷時文書皆焼失不彼代之詔明白是依罪所一レ行也 彼詔作人事旨不快仍又天罰畢人之甚不其心太政大臣正一位今為我無一レ益而南山隠者等皆大恠咎云々 定罪之由例賞云々 依有先従也 巳無事之益云々 仍所示也 我毎皇城焼亡度々更[4]不屑而伴類中所成為公常以嘲弄令大費後々又不断歟上者崇道天皇下者菅家小臣不帝釈宮愁緒雖昌泰二年正月三日行幸朱雀院太上皇与今上額言談召我甚密浅被仰天下之政汝独可奏下先詔如何左大臣見気色陳外我返奏曰上在左臣先詔下畢是極不便有大怨歟云々 議定云有召無別事人成奇恠歟可詩題春生柳眼中即被下畢俄令献詩此日例禄之上両皇帝並后宮各賜御衣衆人驚恠栄耀無比大臣気色頗異当帝初産生給時一時不去男女之役独成其勤成人之後奉諱名敦仁両字皇太子之日依次第権大夫然而有別勅宮雑事独進退譲位之後一向又同延喜御後皇胤不変是只依法皇深御契護持也 但我心不安仍安和帝王生而無益今上乍其位巳無只臣下之最也 度々域交入民間皇道我家末孫立朝庭者数少又無力也 大弐朝臣也者志至誠深右中弁資忠朝臣其志雖浅頗存精信能々可家情為記[5]朝臣似其信家風家志齢未長之前努力努力旧人皆有誠今人更無信彼旧人已不幸今人何為何為幸与不幸信与不信 文時朝臣来訴巳得理我寺申請三筒[6]条事為我下至要府解言上未裁下資忠朝臣不信也 重可言上已無公損何卿可妨何弁可抑又々可相催我家末孫出家入道者一向可任我寺若不然者遇障難歟遍空法師為名利遥下専為我無信不来見向途中損畢為家之恥也 抑当土大災是兵乱也 此事只忠信朝臣之所為抑出敵人常為彼人忿怒詞又発国中兵仕多令公損此由隣国又々不静依一国乱他境謗各所謀計巳似謀反府官可諷諫也 若不制止早可言上也 忠信朝臣館中所集之凶党悪群不件不善輩所行云々 甚可恐怖総府何不糾行乎 達算是巳犯人也 得住国之身成長之便早可糾行是大府不緩怠吉祥院事誰人堪力得改作乎 氏中可定十月十七日悔過于今不怠子孫不絶只依此誠也 此寺伝彼風年来法花十講会先祖代々恩所皆以随喜三宝歓悦味酒安行大功人也 彼後胤尤可賞之由可大弐一昨日夕大恠国司可慎大府何無用心慎門只以信為本者也 至干公事告而無益不披露勤修諸僧可我歓喜之由云々 又々仰云不他筆自書可大弐館云々

右一巻大和国内山永久寺所蔵干[7]嘉永四年秋八月不図感得写云雖末法威神力呵護而存者乎 実尊神御垂跡之因縁可畏可仰幸受土之生共預太政天化益可其浄土列眷属之一人者也

権上座実誠欽記』

[1]返り点の付け方が怪しいのですが、原文通り表記しています。 以下、返り点に関する記載漏れや誤記らしき箇所が複数ありますが、数が多いので注記を省略します。
[2]「淳」の誤記と思われますが、原文通り表記します。
[3]「雄」の誤記と思われますが、原文通り表記します。
[4]「更」だと思うのですが、上の横線が消えています。
[5]「長」の誤記と思われますが、原文通り表記します。
[6]「箇」の誤記かもしれませんが、原文通り表記します。
[7]「于」(ハネあり)の誤記と思われますが、原文通り「干」(ハネなし)と表記します。

更新日:2021/01/30