埋蔵物調査

 平成30年(2018)4月13日、京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課によって、大乗妙典塔の移設に伴う埋蔵物の発掘調査が行われました。
→ 京都市文化財保護課 研究紀要 第2号『一字一石大乗妙典塔調査報告』

 大乗妙典塔の石碑と礎石をレッカー車で移動し、盛り土部分の石積みと土を手作業で慎重に取り除いていくと、鉄板の載った構造物が出てきました。

 鉄板は厚さ約1.5cm、一辺約45cmの正方形で、長年地中に埋まっていたため錆びてもろくなっていました。 蓋とみられる鉄板をそのままの形で取り外したかったのですが、下の構造物と固着していて無理だったため、やむなくバールで叩き割ることに。 そこに現れたのは、直径約45cm、高さ約16cm、厚さ約6cmの円筒形のコンクリート製容器(底がないので容器という表現は少し変かも)でした。

 容器内に流れ込んでいる土を掻き出していくと、、、ありました。 「日向地蔵尊縁起」に書かれていた通り文字の書かれた小石が。 小石の大きさは直径3〜4cmで平たい形をしていて、文字は見えなくてもそれらしい形状の石も含めると、その数は210個あまり。 残念ながら数は予想より少なかったのですが、160年前に書かれた文字が読める状態で土の中から出てきたことに興奮しました。 同時に墨の偉大さを感じた瞬間でもありました。


 コンクリート製容器の底がない代わりに平瓦が敷かれていました。 おそらく水が溜まらないようにとの配慮と思われます。 また、地鎮のために入れたと思われる古銭の寛永通寶も1枚出てきました。 この寛永通寶は背面に「文」の字があることから、寛文8年(1668)に亀戸で発行された「文銭」と呼ばれる種類のようです。 小石には「若」「佛」など法華経の一部とみられる様々な文字が書かれていました。
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 コンクリート製容器はまだ強度的に大丈夫そうだったので、移設にそのまま再利用することになりました。 出土した小石、瓦、寛永通寶の他に、平成の各種硬貨をステンレス製のざるに入れ、それをコンクリート製容器内に納め、最後にセラミック板で蓋をしました。 こうして89年ぶりに太陽の光をあびた経文石は、陽泉亭徳翁居士の思いとともに、移設した大乗妙典塔の下で再び永い時を刻むことになりました。

更新日:2022/04/15