十牛図

 十牛図(じゅうぎゅうず)は、悟りにいたる10の段階を10枚の図で表したもので、中国の宋の時代の禅の入門書です。 「真の自己」が牛の姿で表されているため十牛図といい、十牛禅図(じゅうぎゅうぜんず)や牧牛図ともいいます。

 絵にはそれぞれ漢文の「序(じょ)」と漢詩の「頌(じゅ)」がつけられ、禅の考えや絵の説明が書かれています。 漢詩(頌)は北宋時代(960〜1127年)の廓庵師遠(かくあんしおん)禅師が作り、序は弟子の慈遠(じおん)禅師がのちに付けました。

段階 読み方 解釈
1第一図 尋牛 じんぎゅう 仏性の象徴である牛を見つけようと発心したが、牛は見つからない。
2第二図 見跡 けんぜき
(けんせき)
経や教えによって仏性を求めようとするが、分別の世界からはまだ逃れられない。
3第三図 見牛 けんぎゅう 行においてその牛を身上に実地に見た。
4第四図 得牛 とくぎゅう 牛を捉まえたとしてもそれを飼いならすのは難しく、時には姿をくらます。
5第五図 牧牛 ぼくぎゅう 本性を得たならそこから真実の世界が広がるので、捉まえた牛を放さぬように押さえておくことが必要。慣れてくれば牛は素直に従うようにもなる。
6第六図 騎牛帰家 きぎゅうきか 心の平安が得られれば、牛飼いと牛は一体となり牛を御する必要もない。
7第七図 忘牛存人 ぼうぎゅうぞんじん
(ぼうぎゅうそんにん)
家に戻ってくれば、牛を捉まえてきたことを忘れ、牛も忘れる。
8第八図 人牛倶忘 じんぎゅうぐぼう
(にんぎゅうぐぼう)
牛を捉まえようとした理由を忘れ、捉まえた牛を忘れ、捉まえたことも忘れる。忘れるということもなくなる。
9第九図 返本還源 へんぽんかんげん
(へんぽんげんげん)
何もない清浄無垢の世界からは、ありのままの世界が目に入る。
10第十図 入鄽垂手 にってんすいしゅ 悟りを開いたとしても、そこに止まっていては無益。再び世俗の世界に入り、人々に安らぎを与え、悟りへ導く必要がある。

参考

更新日:2021/05/01