六道と四聖と十界

 六道(ろくどう/りくどう)とは、迷界(めいかい)ともいい、迷いあるものが限りなく生と死を繰り返し、動物なども含めた生類に生まれ変わる(=輪廻(りんね)する)6種類の迷いある世界のことをいいます。 最初は五趣(五道、五悪趣)と呼ぶ5種類の世界でしたが、後に修羅が加わって六道となりました。

 四聖(ししょう)とは、天台宗において六道輪廻に付加された4つの世界を指します。 悟界(ごかい)ともいいます。

 十界(じっかい)とは、天台宗の教義において、人間の心の全ての境地を十種に分類したもので、六道に四聖を付加したものです。 十界論、十方界あるいは十法界(じっぽうかい)とも言われます。

 仏教の世界では、天道も悟りの世界ではなく迷いの世界なんですよね。 同じ天の文字が付く言葉ですが、キリスト教の天国とはまるで意味が違います。

 なお、争いの絶えない状況のことを修羅場(しゅらば)と言いますが、この言葉は修羅道から派生したものです。

十界
名称 読み方 意味
1地獄界
/地獄道
じごくかい
/じごくどう
あらゆる恐怖に苛まれた状態。
2餓鬼界
/餓鬼道
がきかい
/がきどう
眼前の事象に固執する餓鬼の状態。
3畜生界
/畜生道
ちくしょうかい
/ちくしょうどう
動物的本能のままに行動する状態。
4修羅界
/修羅道
しゅらかい
/しゅらどう
会話を持たず「武力」をもって解決を目指す状態。
5人界
/人間道
にんかい
/にんげんどう
常心である状態。人間的な疑心暗鬼を指す。
6天界
/天道
てんかい
/てんどう
諸々の「喜び」を感じる状態。主に瞬間的な喜びを指す。
7声聞界 しょうもんかい 仏法を学んでいる状態。小乗の「阿羅漢」による世界を表す。
8縁覚界 えんがくかい 仏道に縁することで自己の内面において自意識的な悟りに至った状態。小乗の「阿羅漢」による世界を表す。
9菩薩界 ぼさつかい 仏の使いとして行動する状態。大乗の「菩薩」による世界を表す。
10仏界 ぶっかい 悟りを開いた状態。仏陀や諸仏を指す「如来」の世界を表す。

 迷いあるものが限りなく生と死を繰り返す六道ですが、その中でも現世の行いによって死後におもむく世界は異なります。 つまり、この世で善い行いをした人が死後におもむく世界は善趣(ぜんしゅ)、この世で悪事をした結果、死後におもむく苦悩の世界は悪趣(あくしゅ)です。

十界 構成
名称 五趣 六道 四聖 三悪趣 四悪趣 三善趣
1地獄界/地獄道
2餓鬼界/餓鬼道
3畜生界/畜生道
4修羅界/修羅道
5人界/人間道
6天界/天道
7声聞界
8縁覚界
9菩薩界
10仏界

 六道の世界を描いたものを六道絵(ろくどうえ)、十界の世界を描いたものを十界図(じっかいず)といいます。

 これらの多くは仏教の教えを庶民に分かりやすく説く絵解きに使われました。 特に熊野比丘尼(くまのびくに)とよばれる女性宗教者が勧進の際に使った十界図は、「熊野観心十界曼荼羅」として知られています。

参考

更新日:2024/05/07