五智如来(五仏)

 五智如来(ごちにょらい)は、密教で五智(=5つの智恵)を成就した五如来、つまり大日如来とその徳から生じた四仏を合わせた5つの仏の総称で、五大如来や五仏(ごぶつ)ともいいます。

 五智如来(五仏)の構成には金剛界(こんごうかい)と胎蔵界(たいぞうかい)の2種類があり、それぞれ金剛界曼荼羅(−まんだら)と胎蔵界曼荼羅[1]に描かれています。

 五智如来像は塔内に安置される場合が多く、密教の教えを視覚的に表す立体曼荼羅(りったいまんだら)を構成することもあります。

 また、五智如来の変化身(へんげしん)(=仏が衆生を救うために姿を変えて現した身)が五大虚空蔵菩薩とされています。

金剛界の五智如来(金剛界五仏) 関連
名称 読み方 方角 曼荼羅位置 五智 五大虚空蔵菩薩
1大日如来 だいにち〔にょらい〕 中央 中央 法界体性智ほうかいたいしょうち 法界虚空蔵菩薩
2阿閦如来 あしゅく 東方 下方 大円鏡智だいえんきょうち 金剛虚空蔵菩薩
3宝生如来 ほうしょう 南方 左方 平等性智びょうどうしょうち 宝光虚空蔵菩薩
4阿弥陀如来 あみだ 西方 上方 妙観察智みょうかんざっち 蓮華虚空蔵菩薩
5不空成就如来 ふくうじょうじゅ 北方 右方 成所作智じょうしょさち 業用虚空蔵菩薩

胎蔵界の五智如来(胎蔵界五仏)
名称 読み方 方角 曼荼羅位置 働き
1大日如来 だいにち〔にょらい〕 中央 中央 方便具足ほうべんぐそく=以下で得た「さとり」を人びとと共有する
2宝幢如来 ほうどう 東方 上方 発心ほっしん=悟りを開こうとする心を起こす
3開敷華王如来 かいふけおう 南方 右方 修行しゅぎょう=悟りへ向かって努力を積む
4無量寿如来 むりょうじゅ 西方 下方 菩提ぼだい=悟りの実感を得る
5天鼓雷音如来 てんくらいおん 北方 左方 涅槃ねはん=悟りが完成する
[1]胎蔵曼荼羅は大日経を元に描かれていて、正式には「大悲胎蔵生曼荼羅」と言い、母親の胎内に眠る胎児の仏性が仏の慈悲によって目覚めて育ち、やがて悟りを得るという過程を表しています。
金剛界曼荼羅と対になる関係で、平安時代以来「胎蔵界」曼荼羅と称されてきましたが、原語に「界」(=世界)を意味する語が含まれていないことから、「胎蔵」曼荼羅が適切だとする説もあります。

参考

更新日:2022/03/11