街角の仏さま

 京都では地蔵盆[1]が大変盛んで、街の至るところにお地蔵さんが祀られています。 そうしたお地蔵さんの数は約5,000体とか。

 「ホンマにそんな数あるんかいな?」

 最初は地蔵菩薩だけを探すつもりでしたが、地蔵菩薩以外に大日如来も多数祀られていて、両者の識別が難しい場合もあることが分かりました。 そこで、寺院内にあるもの除いて、街角にあるすべての仏さまの小堂、祠、石仏群を数えることにしました。

 調査結果は下表の通りで、Googleマップのストリートビューや現地調査で確認できたものと他情報[2]に基づく確認中のものを合わせると、約4,000ヶ所[3]もありました。

表 街角の仏さまの小堂、祠、石仏群の数(寺院内を除く)
内訳 人口比
(1万人あたり)
確認済 確認中
左京区 486 48 534 32.2
東山区 297 1 298 81.4
山科区 188 14 202 15.0
北区 363 31 394 33.6
上京区 459 77 536 63.9
中京区 341 12 353 31.9
下京区 368 1 369 44.6
南区 318 0 318 31.2
右京区 451 3 454 22.5
西京区 141 1 142 9.5
伏見区 593 10 603 21.7
合計 4,005 198 4,203 28.7

 お地蔵さんの祠は狭い路地の奥にあることも多く、調査漏れはまだまだあると思います。 1ヶ所に複数の石仏が祀られていることもよくあります。 従って、街角の仏さまの総数は8,000体以上ありそうで、その中の割合を考えると地蔵菩薩が約5,000体というのは当たらずとも遠からじという感じです。


お地蔵さんの祠と覆屋

 次に、調査で気づいたことや改めて感じたことを記します。

1.数
行政区別で数が多いのは伏見区、上京区、左京区の順[4]で、最多の伏見区と最少の西京区とは約4.2倍の差がありました。 また人口比でみると東山区、上京区、下京区の順になり、最大の東山区と最小の西京区とは約8.5倍の差がありました。 ある程度の差は予想していたものの、こんなに地域差があるとは思いもしませんでした。
知人が「上京区にはすべての町内にお地蔵さんがある」と言っていたのも、まんざら嘘ではなさそうです。
2.分布
やはり昔から人が住んでいた場所に多いようです。 昔の洛中(旧お土居の内側)と伏見の中心部(旧伏見市)に集中しているほか、昔の街道沿いにも多く見られました。
新興住宅地は概して少なかったのですが、集合住宅の中には棟毎にお地蔵さんをお祀りしている例もあり、いかにも京都らしいなぁと感心しきりです。
3.場所
十字路の角、T字路のどん突き、路地の奥などの路上または道に面した私有地の一角に祀られている場合が多く、他には公園内、社寺の門前、銭湯の前なんてのもありました。 公園内だと公共スペースですし、地蔵盆を開催するのにも都合がいいのでしょうね。
市内中心部では専用の土地がなくて、民家、マンション、ビルなどの塀や壁に埋め込まれている祠も多くみられました。 お地蔵さんの住宅事情も地価と反比例しているようです。
4.移設
近年、家屋の建て替えや土地の再開発に伴う祠の移設が多くなって来たように感じます。 同じ町内の近所に移設することが多いようですが、中には移設先が不明の場合もあり、そんな時はお地蔵さんの安否が心配になります。

 終わりのないお地蔵さん調査。 これからも気長に続けていきます。


[1]京都の地蔵盆に関する詳しい情報は、『京都をつなぐ無形文化遺産』HPの「京の地蔵盆 ❐」をご覧ください。
[2]森篤さんが作成された「京都のお地蔵さんmap 〜西陣を中心に〜 ❐」と「京都化粧地蔵MAP ❐」は、すべて現地調査に基づく貴重な写真情報で、本当にすごいの一言です。
[3]情報は随時更新しており、今後も数は変わっていきます。
[4]以前は上京区を最多としていましたが、調査を進めるうちに伏見区の数が増えて逆転しました。

更新日:2024/03/18