祭事

祀りと祭り

 「祀り」と「祭り」はどちらも「まつり」と読み、その意味は少し異なりますが、合わせて「祭祀」といいます。

 「祀り」は神や尊(みこと)に祈ることであり、その祈る儀式を指します。 すなわち神職が行う「祈祷」や「占い(神との交信の結果)」などが祀りであり、いわゆる「神社神道」の本質が祀りともいえます。

 一方、「祭り」は命・魂・霊・御霊(みたま)を慰める慰霊の行為です。 中国語の「祭」の漢字の本来の意味は葬式のことだそうですが、慰霊という観点でみれば、日本語の意味と相通じるものがあります。 日本各地にある鯨祭りは、鯨をテーマにした娯楽イベントではなく、捕鯨によって命を落とした鯨を慰霊する行事です。

 祭祀と関係なく行われる賑やかな催事やイベントについても「祭」と称されますが、これは本来の意味での祭りではありません。


社寺における祭祀

 神社神道では神社に鎮座する神霊や神霊が宿る御神体に対して儀礼が行われます。 つまり、神霊をその場に招き、神霊を饗応し、神霊を慰め、人間への加護を願う祭祀が行われます。

 寺院では神仏や死者の霊、仏像・仏塔・名号本尊・曼荼羅に対して儀礼が行われます。 これが仏教における祭祀で、通常は仏事・法要・供養などと呼ばれます。 仏教には元来、祭祀の対象となるものは存在しませんでしたが、仏像・仏塔の登場によって、仏像や仏塔に対する儀礼が成立しました。

 お盆の盆踊りや盂蘭盆会は、仏教行事としての盂蘭盆と、日本古来の信仰(古神道)の一つである先祖崇拝とが習合(神仏習合)したものといわれています。


祭礼

 祭祀は定期的に行われるとは限りませんが、年中行事や通過儀礼と関連して定期的に行われるようになると祭礼へと変わっていきます。

 祭礼は共同体統合の儀礼としての機能をもつようになり、やがて祭礼を行う者と観賞する者との分化や、山車の曳行や芸能の披露といった娯楽性の追求が進みます。 そして本来の宗教的意味は薄れていきます。

 神社や寺院を主体または舞台とすることの多い祭りですが、その目的や意義は様々です。

 京都では様々な祭りが毎日といっていいほど開催されています。 祭りに参加する際は、そこで行われる催事を楽しむだけでなく、祭りがもつ本来の意味も思い起こしてください。

更新日:2015/08/09