三十三所 壒嚢鈔 正保3年(1646)
壒嚢 現在
1 那智山如意輪堂 如意輪也 紀伊國牟婁郡ニアリ 靣[1]七間奥ヘ十間ノ堂也 願主裸形聖人ト云也。  1.青岸渡寺
2 那智山千手堂[2] 千手 五間四靣堂。願主禅戒上人ト云リ。 廃絶
3 金剛寶堂紀三井寺ト云 䓁[3]身十一靣紀伊國名草アリ 願主誦光上人 昔ハ。三間四靣今ハ五間四靣ノ堂ト云。  2.紀三井寺
4 粉河寺等身千手紀伊國那賀郡ニアリ。願主大伴ヲトモ孔子古七間四靣堂也。宝亀元年建立  3.粉河寺
5 施福寺槙尾マキノヲ寺ト云 千手 和泉國和泉郡ニアリ 欽明天皇御願行滿上人建立。三間四靣堂也。  4.施福寺
6 南法華寺壷坂寺ト云。丈六 千手 大和國高市郡ニアリ 願主道基聖人 八角堂ト  6.壷阪寺
7 龍蓋寺岡寺ト云 丈六 如意輪 十一佛ト云。大和國高市郡アリ 願主弓削道鏡 三間四靣。礼堂作ト  7.岡寺
8 長谷寺初瀬寺ト云 丈六十一靣大和國高市郡ニアリ 願主道明德道上人 古ハ。三間四靣。今ハ七間奥ヘ九間 礼堂作ト  8.長谷寺
9 南圓堂興福寺ニアリ。丈六 不空羂索 弘仁四年建立 光仁天皇ノ御願ト〓[4]藤原冬嗣弘法大師ヲ相語テ。草創シ給者也。  9.興福寺 南円堂
10 准胝堂三尺 准胝 上醍醐ニアリ。聖宝僧正建立 11.醍醐寺 「准胝堂」焼失[5]
11 正法寺岩間寺ト曰。等身 千手 近江國勢多郷ニアリ。上醍醐ノ東ニ當レリ。㤗[6]澄法師ノ建立。一間四靣堂也。 12.岩間寺
12 石山寺丈六 如意輪十一仏 近江國志賀郡勢多郷ニアリ。聖武天王ノ御願七間四靣也。良弁ノ建立 13.石山寺
13 如意輪堂等身 如意輪 三井寺南院ニアリ。智證大師建立 14.三井寺
14 六角堂頂法寺ト云。一搩[7]半ノ金銅 如意輪 太子七生ノ御守佛洛陽ニアリ。聖德太子ノ御建立 18.六角堂
15 清水寺八尺 千手 東山音羽山ニアリ。願主田村將軍延鎮法師ノ建立 延暦十七年七月二日立 以上皆南向堂。 16.清水寺
16 行願寺カウ堂ト云。八尺 千手 洛中アリ。行圓上人寛弘二年建立。東向堂也。 19.行願寺
17 六波羅蜜寺八尺 十一靣 空也上人建立 村上御宇天暦五年草創 17.六波羅蜜寺
18 觀音寺等身 千手 洛外今熊野ノ奥ニアリ。弘法大師御作 15.観音寺
19 菩提寺穴太寺ト云。三尺 正観音 金色 丹波國桑田郡ニアリ 三間四靣ノ堂也。 21.穴太寺
20 良峯寺八尺 千手 革堂ノ本尊ノ二御衣木 西山ニアリ。願主道圓源筭[8]兩上人ノ建立ト 20.善峯寺
21 総持寺三尺 千手 長谷觀音ノ御作也。又五寸ノ十一靣同御作始一夜ノ造給試ミノ觀音ト云也。接津[9]國嶋下アリ 願主山陰中納言仁和二年五月十五日本ノ造功ヌ。其間三年也 堂舎ハ寛平二年二月四日父中納言第三回ノ追福ニ當テ。子息七男七女同心〓[4]建立。或ハ試ミノ觀音ヲ用ル說アリ。 22.総持寺
22 勝尾寺等身 千手 接津[9]國豊嶋郡ニアリ。願主淨遍上人 23.勝尾寺
23 仲山寺 十一靣 聖德太子御建立。攝津國ニアリ。 24.中山寺
24 清水寺丈六 千手 播摩[9]國ニアリ。實ハ丹波接津[9]國三界ト。聖德太子御建立。 25.清水寺
25 法華寺等身 千手 播磨國印或猪南郡ニアリ。願主空鉢上人五間四靣ノ堂也。 26.一乗寺
26 如意輪寺書寫山ト云。一尺六寸 如意輪 願主性空上人五間四靣ノ堂ト云也。 27.圓教寺
27 成相寺 則ナリア井ト云。 一搩[7] 千手 丹後與佐ヨサ郡ニアリ。 28.成相寺
28 松尾寺等身 馬頭觀音 同國ニアリ。網人ノ建立。七間四靣礼堂作ト 29.松尾寺
29 竹生嶋等身 千手 近江浅井郡ニアリ。行基ノ御建立。昔三間四靣今ハ五間四靣ノ堂ト 30.宝厳寺
30 華嚴寺谷汲タニクミト云。延暦年中ニ此地ヨリアフラ湧出ユシュツス。是ヲ汲テ灯明ニ用ル故に。[10]。七尺 或七尺五寸 十一靣美濃國佐美郡ニアリ。豊然法師ノ建立五間四靣ノ堂也。 33.華厳寺
31 觀音寺三尺 千手 近江國神﨑郡ニアリ。聖德太子ノ御建立 三間四靣ノ堂也。 32.観音正寺
32 長命寺三尺 聖觀音 近江蒲生郡ニアリ。靣七間奥ヘ六間ノ堂也。 31.長命寺
33 御室戸寺二丈二尺 千手 山城國宇治郡ニアリ。光仁天皇御願寛空上人建立五間四靣ノ堂也 10.三室戸寺
參詣サンケイノ次第也。 就次第異説是多欤。 或ハ爲長谷御室戸長谷ヲ爲 或説ニ云只便路ヲ爲。 不前後。 此記ハ久安六年長谷僧正參詣之次第也。 或夜長谷僧正ノ夢ニ。於琰魔王宮。月[11]本ノ生身觀音卅三所ヲ註セル記録ヲ見ルニ則今ノ日記也ト
≪以下、略≫
[1][靣]は[面]の異体字です。
[2]嚢鈔では那智山の如意輪堂(現・青岸渡寺)と千手堂を別の2ヶ寺として、現在の5番札所葛井寺が抜けています。 千手堂は那智滝の近く飛瀧神社内にありましたが、明治初期の神仏分離で廃されました。
[3][䓁]は[等]の異体字です。
[4]〓は[〆]や[メ]に似た[為]の省画で、「シテ」と読む片仮名です。
[5]平成20年(2008)8月の落雷による火災で准胝堂が焼失し、現在は下醍醐の金堂に准胝観音が安置されています。
[6][㤗]は[泰]の異体字です。
[7]原文は[搩]と微妙に形が異なりますが、文意から判断しました。
[8][筭]は[算]の異体字です。
[9]「接津」「播摩」はすべて原文のまま表記しています。
[10][尒]は[尓(爾)]の異体字です。
[11][日]のはずだと思うのですが、原本は[月]に見えます。

更新日:2023/05/30