愛染明王廿六ヶ所 京都名所案内図会 明治20年(1887)
京都名所案内図会 現在
壱番 六角堂 愛染院[1]
※ 平成9年(1997)、現在地へ移転
二番 フクジユ院 三條堀川東 ★調査中[2]
三番 因幡堂 ノ内 因幡堂 「観音堂/愛染明王[3]」廃絶
四番 長得寺 ノ内 ★調査中
五番 桂善寺 ノ内 ★調査中
六番 稲荷山 伏見 伏見稲荷大社 「愛染堂[4]」廃絶
七番 山王社 ノ内 佛光寺室町角 日吉神社
八番 住吉社 ノ内 高辻 住吉神社
九番 住吉社 中導寺村 住吉神社
十番 壬生寺 ノ内 壬生寺 「愛染堂[5]」廃絶
十一番 東寺 ノ内 東寺 宝物館/愛染明王
十二番 同寺 大師堂ノ南 東寺 毘沙門堂/愛染明王
十三番 清水寺 ノ内 清水寺塔頭 仲光院[6]」廃寺
※ 明治23年(1890)、本寺に合併
十四番 七観音 ノ内 八坂 七観音院」廃寺?[7]
十五番 八坂神社 ノ内 八坂神社 「本願院・愛染堂[8]」廃絶
十六番 清荒神 ノ内 護浄院(清荒神)
十七番 革堂 ノ内 革堂
十八番 三宝院[9] 猪熊下立賣ニアリ 「三宝寺[10]」廃寺
※ 明治17年(1884)、毘沙門堂と合併
十九番 真如菴 中立賣千本西 愛染寺[11]
廿番 北野 境内 北野天満宮 「愛染堂 [12]」廃絶 /愛染明王像は西正寺[13]
廿一番 弁財天堂 廃絶?[14]
廿二番 清和院 清和院
廿三番 岩上寺 岩上神社[15]
廿四番 地藏院 寺内 上品蓮台寺子院 地蔵院[16]」廃寺
廿五番 明王院 紫竹村 廃寺?[17]
廿六番 神光院 西鴨 神光院
[1]もと六角堂頂法寺の塔頭で中京区六角通東洞院西入堂之前町にありましたが、1868年に頂法寺から分離し、1997年に現在地へ移転しました。 「都名所図会(巻之一)」では六角堂頂法寺の本堂東側に「愛染堂」が描かれています。
[2]宝暦4年(1754)の「名所手引京圖鑑綱目」を見ると、三条通堀川東入(現・橋東詰町)の北側に「音トク寺(=音徳寺)」、南側に「徳レン寺」があります。 このいずれかが「フクジユ院」と思われますが、今のところ決め手がありません。
[3]都名所図会(巻之二)」の因幡堂平等寺の項に以下の記述があります。 「観音堂の本尊は慈覚大師の作 愛染明王弘法大師を堂内に安置す」 残念ながら現在の寺宝リストに愛染明王はなく、度重なる火災によって焼失したものと推測しています。
[4]花洛名勝図会(東山之部八)」の稲荷神社の項に以下の記述があります。 「愛染堂 境内の北側にあり」
伏見稲荷大社には、東寺の末寺で愛染寺(伏見稲荷本願所)という神宮寺も存在しましたが、こちらの可能性は低いと考えています。 愛染寺は慶応4年(1868)に廃寺となりました。
[5]都名所図会(巻之二)」では壬生寺の境内に「あいぜん堂」が描かれています。
[6]他の古文書から仲光院と考えています。 「拾遺都名所図会(巻之二)」の中に以下の記述があります。 「仲光院 大日堂の南にあり 本尊愛染明王 歓喜天を安置す」
[7]七観音院は2018年に法人番号が更新されていますが、門や堂宇がすべて取り壊され、現在は更地になっています。
[8]花洛名勝図会(東山之部一)」の祇園社の項に以下の記述があります。 「愛染堂 薬師堂の向にあり 北向」
[9]原文のまま「院」としています。
[10]拾遺都名所図会(巻之一)」の中に以下の記述があります。 「稲荷荒神社 猪熊通出水の南にあり ・・・ 今天台宗の僧住して三宝寺と号し 山科毘沙門堂に属す」
[11]所在地の一致と寺院名から「真如菴」=「愛染寺」と推定しました。
[12]山州名跡志(巻之八)」の天神宮(=北野天満宮)の項に以下の記述があります。 「經所 在神樂所北西向。所安置、・・・愛染〔坐像二尺五寸許、同所安北座〕・・・共皆尊、而古朝日寺諸堂本尊也。」
また、「京都坊目誌(上京第五學區之部)」P166に以下の記述があります。 「愛染堂址 不詳。本尊愛染明王は法華堂に移すと。」
[13]北野天満宮にあった愛染明王像が、廃仏毀釈で近くの西正寺に移されたというWeb情報がありました。
[14]「同」の正確な意味が不明ですが、「北野」の「弁財天堂」と考えています。 元禄9年(1696)の「京大絵図」を見ると、北野天満宮の東門前北側に「弁才てん」が描かれています。
[15]岩上寺の名称は中山神社(中京区岩上通六角下ル岩上町)の可能性もありますが、二十二番、二十四番との地理的位置関係と、他文書の所在地「ちゑくはう院町にし」とから岩上神社と推定しました。
[16]宝暦4年(1754)の「名所手引京圖鑑綱目」を見ると、「レンダイジ」の近くに千本通に面して「ジゾウイン」があります。
[17]明治3年(1870)の「寺院本末一覧」に、仁和寺の末寺である蓮乗寺の末寺として愛宕郡紫竹村の「明王院」が記されています。

更新日:2022/02/04