第九章　武將名士と吉祥院天滿宮との關係

（一）吉祥院天滿宮古記錄　干中

日藏上人笙の岩屋にてありし事どもを奏上せしと共に自ら菅公の尊像を彫刻して當吉祥院天滿宮に納め給へり されば本殿に合祀せり。

（二）同前　干中

傳敎大師以後叡山の僧侶方々代々參拜法要せらる。

（三）同前　干中

弘法大師はじめ東寺西寺の僧侶方々代々參拜法要せらる。

（四）弘法大師は唐木神鏡を自ら刻みて奉納あり。

『唐木神鏡は弘法大師入唐のみぎり唐土正龍寺に暫く御住職あり或夜三尊現れ給ひ大師に吿げてのたまはく汝日の本より此地へ渡り心願滿足なると、 種々御きやげありていづくともなく立去給ひしかば御名殘おしさのあまり此觀世音藥師せひしの三尊を彫刻し歸朝後吉祥院社に納め給ふ』 と當社記錄干中

（五）吉祥院天滿宮御八講中詩歌法樂の際書詩體につきて

朝野群載　干中

『書詩體（北野、吉祥院庿、他社准_レ之）
（七言三月盡日陪_二吉祥院_一聖庿、同賦古春方暮詩一首以_レ某爲_レ韻幷序官位朝臣名）』

詩體例を當社に採りたり 是れに依りても亦他の神社より先なることを示せり。

（六）本朝麗藻及本朝文粹卷之十序丙詩序三聖廟　干中

『三月盡日陪_二吉祥院聖廟_一同賦_二古廟春方暮_一

江以言

庿基拓_レ地欲_二百年_一之間家業繼_レ塵及_二七代之後_一 吏部大輔相公當_二三月之餘潤_一乘_二五月之休暇_一懷_二故事於廊下_一惜_二春輝於廟前_一於_レ是貫首弟子大長秋納言其餘受_レ賚衒^[1]_レ業之者左圓右方之倫瀝_二中露_一從_二下風_一濟々焉煌々焉 以助_二聖廟之威儀_一以賁_二聖庿之風月_一蓋有_レ以矣 相公策昇_二甲第_一高步_二十六行中_一材却_二辛君_一永加_二三千徒之首_一即以_二槐市之棟梁_一遂爲_二棘路之翅楚_一豈非_三先庿之餘慶延及_二一家之後胤_一哉 方今芳年已盡花月將_レ窮百花亂落叢柯之雪難_レ留一日巳斜柏城之雲漸暗彼伍子江之波徒揚_二五葉之聲_一 仙母山之花空開_二九株色_一未_レ如_下吾靈廟金策頻加極_二人位於夜臺之後_一素功遂立恣_二靈望於日域之中_一方配_二大祖之食_一永傳_上二胎孫之慶_一 焉旣而春夜欲_下朋望_二牛漢之西轉_一夏日吿_レ朔指_二象魏_一而比_レ轅以言性是愚魯雖_レ慙_二鳥雲之嘲_一志猶思_レ齊未_レ抛_二螢雪之業_一一生只樂_二道〓^[2]_一萬事自在_二庿意_一 干^[3]_レ時長保元年閏三月廿九日聊記_二大槪_一繫_二庿籍之卷末_一云_レ爾

時置_二犧楢_一右_二鳳文_一送_レ春今宴_二庿門雲_一一門自有_二千年會_一遮莫花飛後鳥分』

（七）本朝文粹　干中

『七言春陪_二吉祥院聖廟_一同賦_三櫻花殘_二古社_一詩一首（以_レ春爲_レ韻幷序）

藤原敦基朝臣

都城之南有_二一廟宇_一尋_二草創_一 則承和左馮翅歸_二聖敎_一以建_二精舍_一謂_二花餝_一 亦昌泰右僕射重_二祖跡_一以崇_二靈祠_一水土叶_二龍虎之象_一 臺殿足_二神仙之居_一 幽邃之境冠_二絕古今_一 僕將弘_二衆藝_一而開_二儒道_一 自_三尼父之在_二魯邦_一登_二高第_一而步_二臺階_一 何必公孫之佐_二漢室_一從_二彼兩柱_一吿_レ奠九原閉扃冥助被_二於神州之中_一威化及_一^[4]於蠻服之外_一 長施_二一朝鎭護之德_一 高加_二四海儀形之官_一 當土異域未_レ有_二此比_一 爰寺僧夢詩題氏族展_二宴席_一天下屬文之士莫不_二靡然嚮_一レ風猗乎盛哉 道之中興也 觀夫古社年深芳蘭春暮櫻樹列_一レ於此處_一芳房殘_二於其間_一枌楡滋以礙_レ日孤行之雪遲銷松柏老以經_レ霜半段之霞欲_レ盡至_レ如_下粧勝_二群木_一彩異_中俗流_上餘葩之留_二庿門_一矣 彭澤之五柳低_レ頭晩蘃之薰_二仙窟_一焉綏山之一桃赥_レ面者歟 旣而漏箭聲滴露酌醉酣令官之奏_二風操_一也 調_二雲和_一而未_レ歇仙客之把_二羽衣_一也 乘_二是槎_一而欲_レ歸敦基材幹疎而臨_レ老從_レ類櫟社之樹榮耀少而負_レ春憗翫_二叢祠之花_一 唯仰_二神鑒之照順_一不_レ顧_二人謗之反_一レ脣云_レ爾』

（八）本朝文粹　干中　

『九日陪_二聖廟_一聽_レ講_三法花經_一詩一首幷序

明衡朝臣

夫菅大相國者本是　皇家之偉器也 像偉材高早爲_二風月之光輝_一鼎鉉任重能調_二塩梅之氣味_一絕世之宏名可_レ可_二得而稱_一者歟 彼公孫弘之登_二甲第_一旡_レ繼_三鳳䇿於_二累葉之風_一値_三春卿之廻_二金輿_一 空謝_二鴰卯於立槐之影_一 倩思_二先聖_一猶璅々焉 爰雲駕遄傕風儀永去以後振_二靈威於蒼穹之上_一施_二神化於赤縣之中_一 遂乃鞏洛之地更祠壇奚致_二丹襟_一 以仰_二玄應_一之者自_レ東自_レ西把_二昔卷_一 以期_二素葉_一之者或朝式暮是以大長秋源納言建_二花堂於其處_一 鎭擊_二大法之皷_一安_二桑門於其中_一常吹_三三昧之螺_一 今當_二季秋重陽之節_一新開_二一乘八講之筵_一啒_二緇徒_一以翊_二慈雲_一招_二墨客_一而鎭_二德永_一 四果三英之輩拭_二龍轅_一永雄飛江左洛陽之才揮_二鳳筆_一而燕集今日佳會盛哉 大矣旣而春玉五枝之燈頻佻玄碧數盃之河綏酌座上耆父私相語云 越水之廣浪靜丹瑩_二珠玉之光_一湖山之祠雲晴風傳_二絃^[5]當之曲_一 皆是事出_三靈異_一道乖_二菩提_一 豈如_二我聖庿_一轉_二法輪_一而日積_二禪定之窓松寒_一擬_二梵宇_一而身深_二經行之庭苔老_一 明衡望_二萍實_一而思_二生涯西𡹛之景_一驚_レ魂對_二菊蘃_一而隔_二榮路東籬之露_一添_レ淚推爲_二唱首_一彌增_二原顏_一云爾

（九）中右記　干中

『第七十三代堀河天皇の御宇寬治六年三月廿八日今日有_二吉祥院聖廟_一 作文是寺僧依_レ有_二夢想吿_一也』

（一〇）年中行事秘抄近代　干中

『二月廿五日御忌日事、自_二天仁二年_一依_二夢吿_一於_二吉祥院_一修_レ之諸儒參入』とありて多くの儒者參詣ありしものなり。

（一一）同前　干中

『北野御忌日廿五日　二月の廿五日は天滿大自在天神のかみあがり給ひし御日なり夢のつげありて天仁二年より吉祥院にて八講あり菅家のともがら參て是を行ふ』 とありて菅家の後裔たるものは皆集り詣でて種々の神事にたづさわりしものなり、 明治維新前まで續けりと當社記錄に見えたり。

（一二）吉祥院天滿宮古記錄　干中

『足利尊氏將軍となるや當社天滿宮神領として七百石の御朱印幷年々八講料として別に三百石を附せらる』 又足利義勝とも記す。

（一三）和長記　干中

『大永二年壬午二月二十五日巳刻參內聖廟御法樂御連歌有_レ之至_二三更_一二百韻里了』 とありて儒者僧侶等多く集りて詩歌法樂連歌の催しありかゝること年々しば／＼ありき。

（一四）爲記及拾芥記　干中

『延德元年一長者拜堂事_レ十一月十五日己巳菅宰相長直卿氏長者拜堂乃至參_二吉祥院_一先付_二客坊_一長者入_二上戶_一兩侍從入_二東戶_一其儀式見_二次第_一云々 同日參_二向北野社_一云々』 とありて勅使參向と同時に氏長者人は更なり多くの儒者僧侶の參拜ありしを示す。