圓光大師二十五靈所御詠歌 日本歌謠集成 巻四
昭和3年(1928)

御詠歌:

日本歌謡集成 現在
一番 美作國 誕生寺 誕生寺
二幡の。天降ります。椋の木は
 世々に朽ちせぬ。法のしもあと。
二番 讃岐國 法然寺 法然寺
おぼつかな。誰か云ひけん。小松とは
 雲をさゝふる。高松の枝。
三番 播磨國 十輪寺 十輪寺
生れては。まづ思ひでん。故郷に
 契契りし友の。深き誠を。
四番 攝津國 如來院 如来院
身と口と。意の外の。彌陀なれば
 我を離れて。唱へこそすれ。
五番 攝津國 勝尾寺 二階堂 勝尾寺 二階堂
柴の戸に。明暮かゝる。白雲を
 いつ紫の。色にみなさん。
六番 大阪 天王寺 念佛堂 四天王寺 阿弥陀堂(念仏堂)
阿彌陀佛と。こゝろを西に空蟬の
 もぬけはてたる。聲ぞ凉しき。
七番 大阪 一心寺 一心寺
阿彌陀佛と。云ふよりほかは。津の國の
 難波のことも。あしかりぬべし。
八番 紀伊國 報恩講寺 報恩講寺
極樂も。かくやあらまし。あらたのし
 はや參らばや。南無阿彌陀佛。
九番 大和國 當麻奧院 往生院 當麻寺 奥院
阿彌陀佛と。申すばかりを。つとめにて
 淨土の莊嚴。見るぞうれしき。
十番 大和國 天香具山 法然寺 法然寺
香久やまや。麓の寺は。狹けれど
 高き御法を。説きて弘めん。
十一番 奈良大佛 念佛堂 東大寺 指図堂
冴え晴れぬ。光のあるを。おしなべて
 へだてがほなる。朝霞かな。
十二番 伊勢國 欣淨寺 欣浄寺
やはらぐる。神の光りの。影滿ちて
 秋にかはらぬ。短夜の月。
十三番 京の淸水 奧の院 清水寺 阿弥陀堂
淸水の。瀧へ參れば。自ら
 現世安穩。後生極樂[1]
十四番 京の小松谷 正林寺 正林寺
千歳ふる。小松のもとを。栖にて
 無量壽佛の。迎へをぞまつ。
十五番 京都伏見 源空寺 源空寺
一聲も。南無阿彌陀佛と。云ふ人の
 蓮のうへに。登らぬはなし。
十六番 山城國 粟生 光明寺 光明寺
露の身は。こゝかしこにて。消えぬとも
 心はおなじ。花の臺ぞ。
十七番 山城國 嵯峨 二尊院 二尊院
足引の。山鳥の尾の。垂り尾の
 長々し夜を。祈るこの寺。
十八番 おなじく 愛宕 月の輪寺 月輪寺
月影の。至らぬ里は。なけれども
 眺むる人の。心にぞすむ。
十九番 京都 法然寺 法然寺
たゞたのめ。よろづの罪は。深くとも
 わが本願の。あらんかぎりは。
二十番 京都 誓願寺 誓願寺
極樂は。遙けきほどゝ。聞きしかど
 つとめて至る。ところなりけり。
二十一番 山城國 大原 勝林院 勝林院
阿彌陀佛に。染むる心の。色にては
 秋の梢の。類ひならまし。
二十二番 山城國 百萬遍 知恩寺 知恩寺
われはたゞ。佛にいつか。あをひ草
 心の隅に。かけぬ日ぞなき。
二十三番 京都 淨華院 清浄華院
雪のうち。佛の御名を。唱ふれば
 積れる罪も。やがて消えぬる。
二十四番 京都 黑谷 光明寺 金戒光明寺
池の水。人の心に。似たりけり
 濁り澄むこと。定めなければ。
二十五番 京都 華頂山 知恩院 知恩院
草も木も。枯れたる野邊に。たゞひとり
 松のみのこる。彌陀の本願。
[1]京都六阿弥陀も同じ御詠歌ですが、この部分が「後世極楽」になっており、他に「往生極楽」となる場合もあるようです。

更新日:2024/05/17