吉祥院天滿宮詳細錄 第八章 p231 - 236
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第八章 皇室と吉祥院天滿宮との關係

吉祥院天滿宮古記錄 干中

(一)吉祥院天滿宮の御神靈は人皇第六十一代 朱雀天皇四年八月かの日藏上人、笙の崫にて受けし菅神の御吿を奏上し給ひしより、帝は直ちに菅御幼少の像を御宸刻ありて菅の神靈として吉祥院孔子堂即文章院の西に奉祀し給ふ。 是れ勅命を以て菅靈を祀うれたる最初の御社なり。 是れより吉祥院廟と號し年々勅祭を執行せらる。
(二)朱雀天皇は常に佛法を信じ給ひしが觀世音菩薩の大慈大悲とは衆生におゐて、天也地也也母也と云事を深く感應まし/\て朝廷に於かせられても佛會を始め給ふ、時に此黃金如意輪觀世音菩薩を深く御信仰まし/\て御念持佛となされしが後當社に御下附ありしものなり吉祥天女院に安置して今に存す
(三)第六十六代一條天皇正曆四年太宰府へ勅使を差し立て正一位太政大臣を贈り賜ひし年より年々朝庭より祭祀料を當社へ下し給へりといふ。
(四)第七十代後冷泉天皇の御宇、治曆二年三月十八日天滿宮御神殿を新しく改して正宮祭の節 帝は天滿宮御神號を御宸翰ありて奉し給へり。

扶桑略記及百鍊抄 干中

『吉祥院廟(在吉祥院森內吉祥天女堂西)。 治曆二年三月十八日吉祥院新天神堂

(五)第七十四代鳥羽天皇天仁二年夢の御吿げに依りて同二月二十五日より四日間吉祥院天滿宮に於て菅第二百年の祭典を特別盛大に行はせ給ひ其の後每年二月二十五日の御忌日には必ず當社に於て御八講料を御下賜ありて之れを修することに御定め給ひき。 されば以後每年菅家のともからまいりて是を是[1]原敦基大江以言の如きの文人も集りて詩文を作りてまいらせける。 以後歷代の帝も御崇あつかりし御社なり。
(一)年中行事秘抄代及菅家文叢 干中
『二月(月令仲春日在大圭斗建卯之辰也律中夾鐘)廿五日北野御忌日事自天仁二年夢吿吉祥院之諸儒參入』
(二)事根源 干中
『北野御忌日、廿五日、二月の廿五日は天滿大自在天神のかみあがり給ひし御日なり夢のつげありて天仁二年より吉祥院にて八講あり菅家のともがら參て是を行ふ』
『吉祥院御八講 自天仁始行』
(三)國花萬葉記 干中
『二月廿五日北野天神御忌日 此日吉祥院ニテ八講アリ』
(四)山州名跡志卷之十一 干中
『舊記日 鳥羽院御宇天仁二年二月二十五日依菅相始行北野忌日吉祥院八講云々』
(六)第八十七代四條天皇文曆二年吉祥院天滿宮御八講料として加賀國笠間卿[2]の柴山ノ庄、富墓ノ庄の二庄を賜ふことゝなる。
(一)吉祥院天滿宮古記錄 干中
『加賀國號富墓柴山之庄者往古無年貢興癈地也雖然仁者樂山依因緣宣旨申神領(○虫)施入永法華八講料云々
四條院帝の御宇文曆二年二月廿三日大學頭前長門守奉』
(二)吉祥院天滿宮御八講とは菅家、卿、神官、及各宗の僧侶等拜殿に列座し勅使の參向を待ちて祭典を行ひ法華經八軸講じて論議を爲し又詩や歌を作りて奉り或はチゴ論議とて七八才乃至十二三才ばかりの兒に論議をなさしむ其の他とり/\の式あり。
(三)日次紀事臨時部 干中
『吉祥院天滿宮八講につきて、 御年忌有御八講等禁裹[3]亦間被之四箇大寺僧徒參集取䰗八日交被師第五日講法華經第五卷五卷與五願倭音相同故此日稱五願日此日勤規模故延曆寺專勤之凡法會中有朝坐夕座之儀及大行十種供養行香等式卿著坐伶人舞樂等之事或領掛行香袋被物卿被勤之[4]法會間宮門跡被師則出仕時執綱執蓋、 殿上人被勤之凡法事或有法華八講或有法華懺法或有觀音懺法五位職事監之是謂御法奉行一會式終後多有被行赦事事勤仕之』
(七)爲記 干中
第百〇三代後土御門天皇の御宇延德元年十一月十九日吉祥院相撲會長者子同予參向廿日吉祥院御八講師花園被

これ菅の御先祖は相撲の祖神なれば御神慮にふべく當地方の若者は農業其他餘暇あれば各字每に角力の練場を設けこれに集り心身を鍛鍊し御祭典又は御八講ある際にはこれを催し、きより來り會する者少な[5]らず實に盛大なりき、 されば有名な力士も當地方より多く出たり、 明治[6]新後御八講止みしより漸時衰へ今日にては見る陰もなし、 明治以前に名を得し天神川、桂川、天神の森、勇山等ありしが其中東條町の檜垣與左衞門氏の如きは、天神の森とて當時右に出る者無かりしとなん、 明治三十五年一千年祭の際にも相撲の奉ありしが方より集りし力士も多々ありき、御年中忌萬燈會と共に一つの神事なりき。

(八)拾芥記及爲記 干中
延德元年一長者拜堂事十一月十五日巳巳菅宰相長直卿氏長者拜堂也乃至參吉祥院客坊長者入上戶兩侍從入東戶其儀式見次第云々 同日參向北野社云々』
[1]誤記のように思われますが、原文のまま表記します。
[2]「郷」の誤記と思われますが、原文通り表記します。
[3]」の誤記ですが、原文通り「」と表記します。よく似ていますが別の意味の漢字です。
[4]」点は不要で、後ろに登場する「被勤」の間に「」点が抜けている気がします。
[5]「か」が抜けているか、「な」が「か」の誤記のいずれかでしょう。
[6]「維」が抜けているように思いますが、原文通り表記します。

更新日:2021/02/13